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■商品番号
8724-0-200-130

■JANコード
4573208956661

■商品概要
カラー:ブラック
■商品特徴
・CE LEVEL1対応
■素材
表:ポリウレタン樹脂







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作家・伊藤武かきおろしーーーーー満月通信のコラム

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ヌリティヤ nṛtya नृत्य ちょこっとサンスクリット語


ヌリティヤ(nṛtya)はダンスをあらわす最も一般的な言葉です。語根は√nṛt(踊る)。

nṛは「人間」。nara——na(生きものが)ra(動く)——の圧縮形です。naraは「動物」全般をさす言葉でしたが、のちに「人間」に限定されるようになりました。

そして、nṛpaで「王」。この場合の-paはpati(主)、またはpāla(守護者)の略。人々の主・守護者で「王」は納得ですね。

では、nṛtの-tは何なのでしょう? これがわかれば、√nṛt——「踊る」ことの原イメージがつかめます。

nṛ-√taḍ(打つ)であれば、「ヒトがリズムを打つ」。

nṛ-tad(それ/神)であれば、「ヒトが神となる」。



サンスクリット語が俗語化してゆく過程のひとつに、母音 ṛ を失い、それを a で代替するというのがあります。また、歯音(t,dの類い)が反舌音(ṭ,ḍの類い)化するという現象も見られます。

サンスクリット語根√nṛt は自然に俗語の√naṭ(踊る)という形に変わってゆき、それがまたサンスクリットに吸収されました。

そうして、naṭa(ダンサー、俳優)という言葉が生まれます。そう、ナタラージャ(Naṭa-rāja;「ダンサーの王」で、ダンシング・シヴァ)のナタ。

インドの伝統は、シヴァ神にダンスの起源を求めています。



太初、地平線は吼え、嵐は吹きすさび、大洋は荒れくるい、山岳は震え、大地は揺れていた。

そのとき、シヴァが、ダマル(でんでん太鼓)を持って出現した。彼は躍った。

ダマルでビートを打ち出し、凶暴な空と海、すべての狂奔な自然の上にステップを踏んで踊った。

狂騒な音は音節の規律に、宇宙的渾沌は秩序だった運動にセットされた。

そのプロセスのなかで、リズムとメロディーと詞が発展していった……



この場合の「ステップを踏んで踊った」は、nṛ-√taḍ(ヒトがリズムを打つ)ですね。シヴァの跳躍し、足を踏みならして躍る狂奔なダンス、ターンダヴァ(tāṇḍava)は√taḍが発展した語です。

ステップは、いまだインドのすべての古典舞踊で大きな尊崇を集めています。そして伝統は、最初の舞踊家、最初の言語(文法)学者として、シヴァを礼讃します。

また、naṭaからは、nāṭya(ダンス)という重要な語が派生してきます。そう、南インド、タミルナードゥ州の古典舞踊バラタナーティヤム(Bharata-nāṭyam)のナーティヤ。

2000年も前、バラタという仙人がシヴァ神からインスピレーションを得、『ナーティヤ・シャーストラ』(Nāṭya-śāstra;舞踊演劇論)という本を著しました。もっとも現形成立は1000年ほど前。ちょうどタミルナードゥの寺院儀礼(プージャー)の一つとして、ダンスが正式採用されたころ。

そのタミルの、おもに聖典シヴァ派の寺院で演じられるダンスがバラタナーティヤムで、バラタ仙の法則にのっとった最も正統なるナーティヤ、の自負がこめられています。

神前で舞うダンサー(おもに女性)は、自らが神に成らなければなりません。「おのれが神であるからこそ、神を礼拝できる」が聖典シヴァ派の確信です。そうであれば、nṛ-tad(ヒトが神となる)。

ダンサーは身分的にはシュードラですが、バラモンたちにも神の顕現として礼拝されたということです。



最初のnṛtyaに戻れば、ネパール・カトマンドゥの密教徒たちにチャリヤー・ヌリティヤが伝承されています。「密教の行法(caryā)としてのダンス(nṛtya)」の意でしょうか。

密教の聖典に、「[土壇に描く]マンダラが完成すると、阿闍梨(ācārya;グル)はホトケに成ってその周囲で舞う」とありますから、そうした行法が1000年以上も続けられてきたのでしょう。

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ヴィシュヌ教のタントラ コラム


以前、ベンガルの歌うサードゥ、バウルのお話をしました。

http://itotakeshi.blog33.fc2.com/blog-entry-152.html

今回はバウルの母体となったヴァイシュナヴァ(ヴィシュヌ教)サハジヤー派について——。

ひたすら神を愛するバクティが宗《むね》のヴィシュヌ教と、自らが神になろうとするタントラは、絶対に混じることなき水と油。しかし、ヴァイシュナヴァ・サハジヤー派は、性的ヨーガも実践するコテコテのタントリックでした(過去形)。

当然、ヴィシュヌ教正統派の怒りを買って19世紀には消滅し、その教義や修法は闇に葬られたのですが、最近インドや欧米の学者の研究によって、その実態に少しずつ光がさしてきました。それによると——



ヴァイシュナヴァ・サハジヤー派の始まりは、ベンガルの宗教家、チャイタニヤ・マハープラブ(1486~1533)に帰せられています。信者の群れが、

♪ハレー・クリシュナ、ハレー・クリシュナ、クリシュナ・クリシュナ、ハレー・ハレー

とクリシュナの御名を唱え、太鼓やシンバルを鳴らしながら練り歩くハレー・クリシュナ運動の創始者です。

チャイタニヤは、クリシュナとその愛人ラーダーの熱狂的なバクタ(親愛者)でしたが、ターントリカだったわけでは、おそらくありません。しかし、弟子の一人が彼の伝記のなかに、

「師は、じつはクリシュナ&ラーダー両者のアヴァターラ(化身)である。おふたりは、師の身体のなかで、永遠なる愛の結合に歓《あけ》ぶ」

と書いてしまった。師への敬意のあまりの修辞でしょう。だが、一つの人格のなかに両性具有の神が宿っている、というのはタントラの概念以外のなにものでもありません。

そして、その表現によって、13世紀初頭にインドで仏教が滅んで以来、ベンガル人の心の中で伏流と化していたタントラ信仰が一挙に沸いた。ヴィシュヌ教は、どこぞかに隠れていた仏教シッダのサハジャ乗とたちまちのうちに化合してしまうのです。

こうしてヴィシュヌ教の異端、サハジヤー派が産声をあげました。



かれらは性的ヨーガを実践した、と前記しました。これは、すべての男女にクリシュナ&ラーダーが宿っているというタントリックな確信にもとづく行法です。

とうぜん、世俗的な性愛(カーマ)は、霊的な至高の愛(プレーマ)に昇華されなければなりません。そうして、自らの内にクリシュナ&ラーダーの神聖な愛のいとなみを再現するのです。そして、それを可能にするのが、自身の身体を大宇宙に照応する小宇宙と見なす、独特の微細身の理論でした。

微細身といっても、チャクラという言葉は用いません。クンダリニーもありません。

チャクラに代わる言葉はサローヴァラ(蓮華池)。臍(または下腹)、胸、喉、頭の4箇所にその蓮華池はある。蓮華池と蓮華池を蛇行する川が結んでいる。こうした池と川のイメージは、ガンジス河口の大デルタ地帯であるベンガルの風光の投影でしょう。

川は、通常は頭の蓮華池から下の蓮華池に向かって流れる。

一番下の池はカーマ・サローヴァラ(性愛の池)。川の流れが性的エネルギーとなって蓄えられる処です。マントラや観想やハタ的な行法によって流れを逆転させることが、クンダリニー・ヨーガに代わるかれらのヨーガの核心となります。

第二の池は、性的エネルギーを浄化するマーナ・サローヴァラ(自負の池)。

第三の池はプレーマ・サローヴァラ(至高愛の池)。

そして第四の、最後の池がアクシャヤ・サローヴァラ(不滅の池)。ここに到って行者は、クリシュナ&ラーダーの歓喜を体験するとされています。



お知らせ:特別講座「バウルおかわり」@高尾山

6月11日(土)9:30~16:00ごろ

ゲストは昨年に引き続き パロミタ氏

タイラ taila तैल・・・ちょこっとサンスクリット語・・・



タイラ(taila)は植物油。古代の医書『チャラカ・サンヒター』はタイラとして、ヒマシ油、マスタード油、アーモンド油、亜麻油についても語っていますが、tailaはtila(ゴマ)の派生語ですから、ほんらいはゴマ油をさします。他の油と区別するときは、tila-taila(ゴマの油)というくどい表現になります。

tilaのさらなる語源は√til(油分に富む)。そしてtilaとtailaの関係は、英語のOilとOliveの関係に等しい。地中海世界でオイルといえばもっぱらオリーブ油であったように、古代インドでひろく用いられたタイラはゴマ油でした。

ヴェーダ儀礼における聖性という点でも、ゴマ油はバター油(ギーや醍醐)に次ぎ、護摩の供物として後者を欠いたときはゴマ油の代用が認められていました。粒のゴマも、祭火に投じる供物としてなくてはならないものとされていました。

そして、ゴマ油は身体に塗られました。アビヤンガ(abhyaṅga)はオイルマッサージのように理解されていますが、「身体(aṅga)に対して(abhi)[油を塗る]」にもとづく語ですから、油を塗ること自体が目的となります。チャラカ先生は、

「その昔、ダイティヤ(魔族)の王たちは、ゴマ油を[アビヤンガとして]常用することによって、老衰することなく、病気を離れ、疲れを克服し、戦いにおいて極めて強力になった」

というアーユルヴェーダの神話を紹介しています。



ゴマ油に限らず、油は植物のエッセンスです。植物の神秘的な力――栄養分、ビタミン、香りが凝集しています。これを身体に塗ることによって聖別される、という考えがまずあったのでしょう。

しかし、植物から手作業で油を搾り出すのは、たいへん骨の折れる仕事です。油は昔は貴重品でした。だが、ヒンドゥー教徒の食に油は欠かせない。油を用いることによって、その料理が「浄化される」からです。

肉や魚であれば、煮たり焼いたりするだけでうまい。インドでもヴェーダ時代には牛・馬・山羊・羊が犠牲《いけにえ》として屠られたのちに、調理されました。しかし、のちのヒンドゥー教になると、なまぐさは不浄として遠ざけられることになります。ヒンドゥーの神さまは、ホトケさま同様、ヴェジタリアンなのです。例外は、カーリーやドゥルガーといったおっかない女神たちで、酒と動物のイケニエを要求します。

油(脂)はほんらい肉に属する味覚です。われわれの遺伝子には、「肉にありついた、うれしい」と感じる猿人の歓喜が保存されており、油(=肉)を口にすると、反射的にエンドルフィンが放出される、ということです。

ところが、野菜は煮たり焼いたりしただけでは、たいして美味しいものではありません。が、インドのなまぐさを一切使わぬヴェジ料理であっても、油をうまく用いることで美味しくなります。油を用いることによって、野菜のうま味成分が活性化するのです。さらにスパイスを多用して、味や香りに変化をつけます。油、スパイスを上手に使いこなすことが、インド料理の基本です。

貴重な油をもっとも効果的に用いる方法はタイラパーカ(taila-pāka;「油で調理」の意)。すなわち、少量の油をオタマや小鍋でスパイスとともに熱し、料理の仕上げにジャッとかけてやる。現在、タルカやテンパーリングなどと呼ばれている手法で、たとえば、肉や野菜を水で煮て、最後にこのスパイスオイルで味を調えます。



肉も油もスパイスも使わなかった昔の日本では、かわってダシが発達しました。そして、それが、さっぱりしていて美味しい、油っこくて不味い、という日本人独特の味覚をそだてました。日本料理は世界遺産になるほど素晴らしい料理体系ですが、ダイエットや健康のためとして完全な油抜きを実践されている方もいます。これは逆に健康のためによろしくない。免疫力を削ぎ、老化を早めます。油は適量に摂るべし。そして、体にも注《さ》すべし。

3月5日(土)14:30~18:00のAROUND INDIA&YAJ季節のコラボ講座 「ヘーマンタVol.3」はオイルケアです。来場、オンライン参加をお待ちしています。

カンダなヨーガ・・・コラム・・・



カンダ(kanda)。神田ではありません。サンスクリットで球状の根、球根をさす言葉です。ハタ・ヨーガの本家本元のゴーラクシャが、『ゴーラクシャ・シャタカ』いう著作のなかで、日本でいう臍下丹田《せいかたんでん》に相当するプラーナのタンクのことをこの語で呼んでいます。

ところが、現在のYOGA界でカンダを云々するところはほぼ皆無。ハタ・ヨーガ文献でも、臍下丹田としてのカンダを語るのは、わたしの知るかぎり『ゴーラクシャ・シャタカ』のみ。

しかし、仏教タントラ(後期密教)のサンヴァラ系の文献にカンダが現れます。そして、それによって、ゴーラクシャのハタ・ヨーガの由来が明らかになるのです。



ゴーラクシャがいつの人物であった定かでありません。文献上は7世紀から13世紀までコンスタントに登場します。ヨガナンダの本に出てくるババジみたいにほんとうに不老不死であったのか、それともダライ・ラマのごとく転生したのか、あるいは“ゴーラクシャ”というのは勝れたヨーギンの称号だったのか……?

彼がいつの人であったかの特定は断念せざるを得ないのですが、他の文献やシッダ(成就者)——たとえばゴーラクシャ同様にマハームドラー行法を完成させたティローと比較するために、ハタ・ヨーガの根本文献『ゴーラクシャ・シャタカ』がいつ書かれたかを明確にする必要があります。

わたしは、ここでは詳細を省かせていただきますが、いくつかの理由から11世紀、約1000年前と考えています。

当時、サンヴァラ運動、あるいはシッダとダーキニー(ヨーギニー)の密儀が流行していました。シッダすなわち男性の行者はインド中のピータ(霊場、おもに墓場である尸林)を巡礼します。そしてズバリ云ってしまえば、そこで女性の行者であるダーキニーを相手にセックス・ヨーガを行じるのです。

ゴーラクシャと彼の師マツェーンドラはシヴァ神とブッダと女神(シャクティ)を同時に礼拝する人であり、そうした儀礼に参加することに躊躇《ためらい》はありませんでした。

この儀礼では、「内なる巡礼」なるものが同時に行われます。身体のマルマを霊場《ピータ》に、脈管《ナーディー》をピータとピータを結ぶ街道に見立て、そこに意識とプラーナを巡らせるのです。

特に重要なピータが、臍と心臓と喉と頭に位置する4つのチャクラ。

特に重要なナーディーが、これらチャクラを貫く中央脈管(アヴァドゥーティー)とその左右を流れるラサナーとララナーの3本の脈管。そして、この3脈管および臍のチャクラの支えとして「カンダ」が語られるのです。

タントラを理解するキーは、象徴主義。大乗仏教では、菩薩行であるウパーヤ(方便)と智慧であるプラジュニャー(般若)を合一させてボーディチッタ(菩提心)を得ること強調されますが、仏教タントラの性的ヨーガでは、この三者も象徴化されます。男性の精液が男性名詞のウパーヤに、女性の分泌物は女性名詞のプラジュニャーに、そしてそれらの混合物が中性名詞のボーディチッタに、と。

冗談ではなく、真剣に同一視するのです。一切は象徴と化し、象徴は一切に化す。二つになんの違いもない、と念じるのです。

ダーキニーは男性が射した精と自分のそれとを混ぜ合わせて菩提心とし、シッダはカンダをポンプのように使う金剛蔵印(ヴァジュローリー)という技法を用いてそれを吸い上げ、中央脈管の中を、上のチャクラへと上昇させます。

頭のチャクラに到ると、途方もない歓喜を経験するという。それが悟りの歓喜と同一視されます。



もうおわかりでしょう。ゴーラクシャは、このサンヴァラの「内なる巡礼」をもとに(それだけではないが)、一人で行なういわばクリーンな修法としてハタ・ヨーガを構築したのです。さらのさらなる象徴化として、男女の性的分泌物を左右の脈管を流れるプラーナに、その混合物である菩提心をクンダリニーに置き換えて。

ハタ・ヨーガにおけるクンダリニーというコンセプトの文献上の初出も、おそらくは『ゴーラクシャ・シャタカ』です。

3月10日(木) のYAJ定期講座、密教/タントラ勉強会では、「ゴーラクシャ——タントラのキーパーソン」を予定します。

ヴァイローチャナ Vairocana  वैरोचन・・・ちょこっとサンスクリット・・・





ヴァイローチャナ(Vairocana)。毘盧遮那または毘盧舎那(ともに読みはビルシャナ)と音訳されます。盧舎那(ルシャナ)と縮められることもあります。

西暦の始めに作られた大乗仏典『華厳経』の法身仏。あの奈良大仏は、このヴァイローチャナ。彼は、密教経典の『大日経』や『金剛頂経』の中心仏でもあります。唐に『大日経』系の密教を伝えたシュバーカラシンハ(善無畏)によって「大日如来」と意訳されました。日本ではこの名のほうがポピュラーでしょう。

ヴァイローチャナは、「ヴィローチャナ(Virocana)に関係する」という意味の形容詞。または男性名詞化して「ヴィローチャナの息子、子孫」の意になります。

しかし、ヴァイローチャナを初めて語ったのは『華厳経』ではありません。

そもそもヴィローチャナは、vi(遍く)-√ruc(輝く)に由来する語で、太陽神スーリヤ(Sūrya)の異名の一つ。そして、このヴィローチャナとヴァイローチャナは、バラモン教文献では通常、神々の王(Surendra)インドラと対立する、

——阿修羅の王(Asurendra)としてのスーリヤ

の意で用いられているのです。

最古のウパニシャッド『チャーンドーギヤ』に阿修羅王ヴィローチャナ(=スーリヤ)が登場しますが、よく知られたところでは、阿修羅王ヒラニヤカシプ(彼はナラシンハに化身したヴィシュヌに殺される)の息子プラフラーダのそのまた息子がヴィローチャナ。そしてこのヴィローチャナの息子、すなわち“ヴァイローチャナ”の通り名をもつ阿修羅王がバリ(Bali)。



バリ=ヴァイローチャナは強大だった。バリに率いられた魔族は、神々の勢力を一掃した。バリは地上に一大帝国を築いた。太陽の帝国だ。その治世は慈愛と正義に満ち、人々は平和と豊かさを謳歌した。世界のかたすみに追いやられたインドラは、大神ヴィシュヌにバリを滅ぼすよう懇願した。

ヴィシュヌは矮人《こびと》のバラモン僧に化けて、バリに接近した。

「大王よ。土地を分けてくだされ。この小さな私が三歩で歩ける土地でいいのです」

「よかろう、バラモン殿」気前のいい王者は応えた。

と、矮人は、たちまち宇宙神ヴィシュヌとしての巨大な姿をとりもどし、一歩で天界をまたぎ、二歩で空界を横断した。そして、三歩目の足をバリの頭に踏み下ろし、彼を地下世界に押し込んでしまったのだ。



雨神インドラと太陽神スーリヤの葛藤はヴェーダ以来のテーマですが、じっさい、インドラを崇拝するグループと、スーリヤを崇拝するグループの対立があったのだと思います。そして、本来スーリヤの属性だったヴィシュヌが独立して、インドラについた。スーリヤグループは争いに敗れ、追放された……。そう考えると、神話だけでなく、歴史的にもいろいろ辻褄が合うのです。

たとえば、インドを追われたスーリヤグループの行き着いた先がバリ島。バリの神話でもインドから最初にやってきた神は、スーリヤということになっています。

後のインド神話でも、ヴェーダのスーリヤは失踪した、とされています。

クリシュナの息子サーンバは、実の父(すなわちヴィシュヌ)の呪詛を受けて癩を発するが、太陽に祈ることで全快する。サーンバは太陽神に感謝し、その寺院を建立するが、プージャーの出来るバラモンがいない。そのため彼はペルシアに渡り、ペルシアの太陽神ミスラとその祭司を連れてきた、というのです。

ゆえに、ヴェーダではないヒンドゥーのスーリヤは、ペルシア風の衣装で表現されます。オリッサ州コナーラクのスーリヤ寺院の神もペルシア風のロングブーツを履いています。



大乗仏教徒および初期の密教徒が、インドラとスーリヤの葛藤の物語を知らなかったはずがありません。それなのに、どうして彼らは、自分たちのいわば最高神にインドから逐われたスーリヤの名を採用したのでしょう?

バラモン正統派に対する反発からでしょうか。あるいは、スーリヤ寺院のそびえるオリッサには、ヴェーダ以来のスーリヤ信仰が長く残存していたのかもしれません。

ヴァイローチャナを教主とする『華厳経』も『大日経』もオリッサで成立した、と考えられています。

東アジアに『大日経』をもたらしたシュバーカラシンハも、オリッサの出身でした。

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プロフィール

Author:インド作家_伊藤武(クルシー)
 
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